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2009年10月18日

異界皇子 第5章  官僚集団は

 北部方面総監部では・・・。
 巨象は国道をまたぎ、軍用トラック二台の簡易バリケードを鼻と巨体で押しのけ、ついに正門に到達した。
 中核棟につながる広い舗装路、そこに並んだ4門の重機関銃がけたたましく唄う。弾幕の霞のなか、それの進撃は止まったかに見えた。
 しかし、隊員らの期待は霞が晴れるとともに霧消した。(皮膚が装甲されている!)と疑う間もなく、「マンモス」は兇暴な本性を顕した。長い鼻で機関銃を払い、雷鳴のように吼えながら逃げまどう守備隊員らを追撃した。
 鉄兜の隊員ひとりが太い生きたロープに胴体を巻かれる。彼は次に天高く持ち上げられ、そのまま後方に投じられた。人身のライナーが止まったのはブロック塀のかたいミットだった。隊員は即死した。
 総監部の入口左は、そこで働く隊員らの食堂などが入った建物である。右は備品などが納まる倉庫だ。その間を「マンモス」は縦横無尽にあばれまわった。ジープが2台ひっくり返り、ナトリウムランプは3本へし折られた。
 建物の陰から地響きがする。マンモスのものではない。戦車が一台、キャタピラ音を軋ませながら出現した。隊員らは散り散りになり、「標的」だけになった。
 重火器の砲身が回転し   105ミリ砲弾の発射音がどかんとあたりを揺るがす。狙いは正確だった。胴体中央に着弾の花が咲き、さしもの巨獣も、衝撃で横倒しになった。
 今度こそ敵は斃れた   はずであった。しかし、砲兵は信じがたいことを見ることになる、頭を一度くらっと振るや、それは起きあがったのだ。巨獣は猛然と突進してきた。操縦兵はあわてて車体を後退させたが、手遅れだった。巨大な牙が正面の車体とアスファルトの間に食い込み、それはひっくり返った。7トンもの重量が。
 「緊急対策本部」は急遽、3階から地下に移動した。
 予想外の敵の来襲にそなえ、核シェルターの役目も兼ねるそこに“避難”したのだ。先ほどの部屋とは違い、閉塞感は否めない。それでもTVモニターと、北海道全域、この市を示すパネルとがあり、北部方面総監、知事、市長、道警本部長など、歴とした肩書をもつ面々が応接セットに、ほかの者たちはガラスの壁一枚へだてた司令部に詰め、事のなりゆきを把握しようと懸命になっていた。お世辞にもピクニック気分ではなかったが、市長など、母親にこっぴどく叱られた幼児のようにしおれていたものだ。
 そこに一瞬、微震が発生した。
 ほんのわずかな揺れののち、下士官が一人、蒼くなって応接間に入ってきた。
 「マン……いえ、象は重火器も歯が立たず、ただ今、この建物の玄関を破壊しました」
 本部長はすぐに命令できず、知事にいたっては(どうやってここから逃げ出そうか)と、本気で考えるのだった。
ラベル:マンモス
posted by はむじの書斎 at 18:13| Comment(0) | エンタメ・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月17日

異界皇子 第5章  大通り公園

 この街の中心部には「大通り公園」という、幅100メートルを越す防火帯の役目も果たすベルト地帯がある。テレビ塔を起点に、長さ1.5キロになる市民の憩いの場は、あと半月もすると名物のとうきびワゴンがかぐわしい匂いを風にはらませ、二つの噴水、美しい花壇とともに春の観光シーズンの到来を告げるはずなのだ。
 そこに展開していたのは、陸上自衛隊の一個大隊である。
 戦車、装甲車、軍用トラック、ジープ等、カーキ色で埋まっていた。その上空に白光の集団があらわれた。蜘蛛の仔のように数十、線香花火のように散らばると、まもなく異常事態が発生した。狂いだした隊員の数は火花の数と同数であった。理性を蒸発させた彼らは連鎖反応のように小銃と、奪った機関銃を味方に向けて撃ちはじめた。
 一分後、公園は戦場と化し、五分と少しでそれは血まみれの死体置き場となった。事態のフィナーレは弾薬を満載したトラックの仰々しいまでの爆発だった。
 同刻、一個中隊が南側から道庁本庁舎のヘリ墜落現場におもむいたが、3台のトラックと5台のジープに分乗していた隊員全員は進軍をはばまれた。先頭のトラックを端初に、続けざまに玉突き事故を起こしたのだ。1ブロック先は道庁の前庭だ。けがのなかったひとりの隊員がそれでも前に進もうとした。だが、彼は高圧電流に触れたかのように激しく身体を痙攣させ、10秒後、黒焦げになってアスファルト上にあった。
 部隊長は空からの応援要請と一時撤退とを命令した。このままでは西から占拠された放送局に向かっている中隊も危険だ。放送局は本庁舎のすぐ南である。同じ危険な“壁”があると、じゅうぶん推測できた。しかし、何度試みても、通信兵がヘッドセットで聞いたのは「ザァー」という電磁波のブリザードだけだった。
 市周辺部から、自然に湧いたように人影が中心部に向かい、進軍を開始した。彼らは手にゴルフクラブや包丁を持ち、何者かによって憑かれていたのだが、四方八方でその数は雪ダルマ状に増殖した。
 この街には豊平川という一級河川が市内南西から北東にかけて、雪解けの泥水を押し流していた。そこに掛かる、北海道第二の街とをむすぶ国道の橋のたもとには、パトカーに代わり、自衛隊のジープ3台と、警護隊数名が待機していた。
 ジープのルーフには赤色灯が回転し、路には鉄材を交差させた車止め、そして隊員たちの腕には小銃があった。
 彼らは見た。水銀灯の明かりのもと、群衆がこちらに迫ってくるのを。
 「引き返しなさい。ここから先は立入禁止だ」
 メガホンの警告。彼らには耳はないのか、それを毛ほども気にかける様子がない。
 「警告する。外出禁止のはずだ、引き返せねば発砲する!」
 どんどん距離を詰めていく数百の男女。隊員らの精神は危機感と緊張で沸騰した。
 一般市民を銃撃することが、平時ではいかなる罪悪か、その場の全員がわきまえていたが、すでに『戒厳令』は出ている。
自衛隊が法だ。法に背く者は裁かれなければならない。裁判抜きでだ。
 それでも初めは威嚇だった。驚くべきことに、群衆はぴくりともしなかった。
 全員はただ一点を見つめ、しかも何らかの統一された意思があるようだった。それは発狂しているとしか思えなかった。ぎりぎりの選択を余儀なくされた隊員のうち二名が“戦線”を離脱した。そして残り2つの銃口が火を吹いた。
ラベル:自衛隊
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2009年10月16日

異界皇子 第5章  地下で

 どこをどう歩いたのか、記憶をたぐることはできなかった。
 閻浮がようやっと正気づいたのは、とある地下鉄駅のホームであった。
 彼はぼんやりと手を眺めた。格段に毛深くなり、爪も鋭くなっていた。本来の身体に戻っていた。みがきあげられた敷石の床にあぐらを掻いて。
 「オレの……人間の…、純一というやつの身体は」
 「よくもあれだけ酷使したものだ。ほら、そこだよ」
 吐駁の腰に下がる剣ごしに、すっかりと白くなった貌の人間の少年が、うつむいて背中を壁にあずけていた。
 「爺のぶんも入ってるぜ。もとはっていうと、なんだっけなあ、不治の病で死んだガキのだそうだ。不幸な身の上だ。それにしてももうこっちへ来て二度も“死んだ”か、この世界の生物は弱すぎるぜ」
 「畜生界の生物が、こちらからすると強すぎるだけだ。特に人間は弱い。精神的衝撃だけで死ぬものもいるし、魂が悪に染められやすくできているんだ。それが颶艶の付け目だったのだろう。時間の経過のしかたも違うしな。こちらの一日は向こうの三日ほどだ」
 「ここはどこだ、地下のようだけどよ」
 「人間の都市生活者の使う、“地下鉄”というシロモノの停車する場所だ。それは今、全面的に止まってるよ」
 「オレの身体は…しかしよく無事だったなあ。てっきり滅んでると思った」
 「ニャアニャア啼いたのには参ったがな、どうにか食わせていた。もう問答はこのぐらいにしないか」
 「どうやってこちらに来たとか、どうしてこの身体でいられるのか訊きたいね、最後に」
 「皇太后のしたことに便乗したんだよ。すでにあちらとこちらは異質な世界ではなく、時の壁も崩壊しつつある。上は深刻なことになってるぞ」
 「……?!」
 
 作者のつぶやき
 第5章もそろそろ終わりに近づいてきました。
 リアクションがないので戸惑っています。アメーバでもブログを管理していますので、興味のある方は、http://ameblo.jp/mimimomo-7/ でお待ちしてます。読者のみんなの意向を汲みたいと思うのですが、どうでしょう?
 本編は第6章で終了となります。
ラベル:地下鉄駅
posted by はむじの書斎 at 16:29| Comment(0) | エンタメ・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月15日

異界皇子 第5章  院内

 屋上から院内に通じる扉には鍵がかかっていなかった。返ってそれは彼の警戒感を強めた。
 吹き出る生温かい風とともに、そっと鉄扉を閉める。正面のエレベータはまだ生きているようだが、彼はそれを選ばなかった。左横の非常階段をスニーカーで降りた。 
 「7」と白壁に緑字で大きく塗られている踊り場まで来た時、蛍光灯が消えた。間髪を入れず、朱っぽい非常灯がついた。上と下で扉の開く音と閉まる音が反響する。
 「上は四、下は五…、おいでなすったな」
 彼の足音の予想はぴったりだった。敵意の充満に挟まれるのも彼には肌で痛いほど感じ取れた。
 鉄でできた階段を、一階ぶんだけ降りてみた。
 眼下の敵、その先頭は医師らしかった。白衣に身をつつみ、縁なしメガネの奥にあるにやつく瞳。左手に手術用メスの束。そいつは口を開いた。
 「貴様には逃げ場がない。観念するんだな、閻浮」
 医師の姿を借りた何者かは、彼の正体を知っていた。
 「オレが誰だかわかっているなんざ、いよいよ本丸が近いってわけか。さてはオレの思念でもなぞったか」
 「金剛山の森で貴様に殺された爬虫族別働隊隊長。貴様は忘れても、オレは忘れねえ」
 非常階段の傾斜   背後上方に男三人、女一人の壁。前方下の踊り場に男三、女二の障害。退路は断たれた。
 「覚悟しな! 地獄へ行け」
 男の掌がひらめく。メスは音もなく銃弾に近い速度で飛んできた。純一は身体をひねった。間一髪でそれた兇器は鉄製の階段に衝突し、かわいた音を立てた。
 「あばよ」
 少年は前方に跳躍した。唖然とする集団を尻目に、一気に10メートルを短絡し、下から上がってきた連中の背後につけた。そのまま軽い身のこなしで階段を風のように翔けてゆく。「2」の踊り場を下ったところで、彼の脚は止まった。
 スチール製の机、椅子、ロッカーなどがうずたかく、天井まで積まれていた。用意周到もここまでくれば呆れるほどだ。彼らの背後に皇太后がいるのは火を見るより明らかだった。
 「ちっ、手際のいいこった」
 それらを押しのけている暇はなかった。階段をティンパ二の乱打よろしく降りてくる足音があった。少年は三階まで戻り、鉄製の扉に手をかけた。鍵がかかっていた。わずかだが、きな臭さが鼻孔を刺激した。いやな予感…。
 「逃げられるとでも思ったか、裏切り者が!」
 医師らしき男を先頭に、憑依集団が迫っていた。
 閻浮は精神を集中した。
 息を吸う   吐く   吸う。
 右手に全身の力がこもり、扉は悲鳴をあげた。と同時に灼熱の空気と煙が堰を切って押しよせてきた。
 高熱の空気を吸いこみそうになり、あわてて呼吸を止めたが、扉内部の視界は無きにひとしかった。しかし、悪影響ばかりではない。気味の悪い集団もそれで全員が咳き込み、戦意をそがれていた。
 桃色のマフラーを口に当て、少年は走った。一面火焔の花畑を。グランドコートは放棄した。
 強烈な熱の輻射で全身が蜜柑色に染めあげられ、天井が舞い散る火の粉とともに落下してきた。
 そこはかつて両側に病室のある廊下だった。純一少年は膨大な落下物の下敷きになった。
 (しまった、ここまでか…)
 いつもの表情たる彼(閻浮)も、悲観というもっとも忌むべき重荷につぶされかけている。後方から中身が爬虫族の亡霊たちがメス片手に追いすがる。しかし、逆側から影が走りよってきた。
 閻浮は混濁しかける意識の中で幻を見た。焔と煙の狂宴のさなかで、追手が倒されるのを。そして胸から下を圧していた建材がとりはらわれた。そこにふと見たのは誰あろう、吐駁王……そのりりしい姿だった。
 「あ、あんたは…」
 「何も言うな。行くぞ」
ラベル:火災
posted by はむじの書斎 at 15:12| Comment(0) | 小説・詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月13日

異界皇子 第5章  不時着

 戒厳令下の夜空を、濃緑色をした一機の軍用ヘリが駆けてゆく。
 明らかな服務規定違反だが、操縦士は飛行中、無線のスイッチを切っていたものだ。それをさせたのはひとりの少年だが、機中の隊員らにはそれが「操心術」という異界の魔法であることはおろか、自分らのやっていることに疑問すら抱かなかったのである。
 「あそこがいい…」
 少年が指示したのは、「〇〇脳神経外科」の電飾のついた病院屋上にあるヘリポートである。離島・僻地からの急患を受け入れるスペース。少年は後部座席からそこを見ながら、機体も右旋回した。
 着陸していた時間は30秒あったかどうかだ。
 「元気でな」
 「達者でやれよ」
 「生きて戻れよ」
 パイロットや隊員たちからかけられた激励に、純一は思わず苦笑しそうになった。彼らは全員、どうしてここで降りるのがよく、その目的まで尋いたわけではない。まして、こっちからそれを打ち明けたのでもない。他者の心を操作すると、時に滑稽なことになるものだ。
 地上40メートルの屋上で、少年は離陸するヘリに手を振った。これから彼らには上官からの命令、そして任務が待ち受けているだろう。無事を願わずにはいられなかった。
 さて、屋上からの眺めは、ある意味で壮観極まりないものだった。北を見ただけで、一、二、三、……八つの火災が発生していた。残りの三方にも大小の火の手が挙がっている。閻浮はそれらを全部数えなかった。それは消防の仕事だ。
 ざっと見渡したところ、地上に一般市民の姿はなく、武装した自衛隊員がちらほらしている程度だ。戦車、装甲車、ジープなど、軍用車両が時おり通過していく。消防、救急など、市民生活の安全を守る車はいったいどこへ行ってしまったのだろう。
 「いけねえ、オレもすっかり“人間”らしくなっちまったな…」
 それと、先ほど路上で無意識に「術」を使ったことも気になった。(まあどうでもいいや。道庁の池に行かないとな)と、妙な感情は押しのけて、彼は疑惑の核心部分を眺めやった。そこだけ人工の明かりが消えていた。

 ここからはバトルの連続です。
 沢口菜々美、石倉芳香、高橋未知、佐々木智美、桧原秋絵、また男子不良グループがどうなったのか、知りたいですか? また、奥津先生もいましたね。誰を回復不能にするとか、どんどんシナリオを募集します。回答なき場合は作者がランダムに書きます。お楽しみに。
ラベル:病院
posted by はむじの書斎 at 17:07| Comment(0) | エンタメ・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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