人気ブログランキングへ

2009年11月23日

異界皇子 最終章  明日へ

 白昼夢だった。でないとすれば頭がおかしくなったかどうかだ。
 次々と展開される息をも呑む「物語」に、綾は酔っていた。“感動”したのではなく、インディージョーンズばりの冒険譚とジェットコースター並みの衝撃、そして意外な真相とで。
 一羽のハトが依然として腕に載っている。綾はもはや、それを追いはらう気も失せていた。
 どことなく人間っぽいライオンの貌が見えてきた。
 (アヤ、今のが6年前の事の真相だ。ま、信じるかどうかはお前さんしだいだけれど)
 メッセージは念波で、である。
 (……いや、信じる)
 心なしか、片方しかないライオンの眼がうるんだように見えたのは錯覚だろうか。
 (……いいずらい。だけど伝えなきゃならねぇことがある)
 彼女には悲しい予感が走って、涙腺が決壊寸前になった。
 (そうだ、「もう会えない」ってことだ)
 綾は無言でうつむいてしまう。
 (ここからお前が見えるけど、ずいぶんと何かこう人間でいったら成長したというか、女前になったよな)
 (“女っぽく”でしょ…)
 綾は貌をあげ、クスリとした。
 (おっ、やっと笑ったな。その意気だよ。ところでお前さん、まだ「いじめ」られてるんじゃないだろうな)
 彼女は動作で否定した。頸を真横に三回ふった。
 (そりゃ良かった。でも何だな、人間界もいろいろごたごたしてるようだ。特に6年前の一件では迷惑かけたし、世話にもなった)
 (いいの)
 (家のみんな、元気か)
 (うん)
 (まだ持ってるぜ)と、閻浮はピンク色のマフラーをかざした。
 (ありがとう)
 綾の眼前に急激に靄がかかりはじめた。「あっ」と、引きとめる間もなく、“交信”は、一方的に切れてしまった。

 びくっと肩が動いて、綾は目覚めた。
 腕に載っていたはずのハトはどこへやら。となりの老夫婦もいなくなっている。周囲の雑音が耳にとびこんでくる。噴水前では高校生らしい男子らが、並べた缶の間をスケボーで蛇行してすり抜けていく。なかなかの腕前のようだ。すこし視線をずらすと、芝生では家族連れやアベックが弁当をひろげていた。中には「アーン」とやっている組もあった。
 それに若干嫉妬しながらも彼女はベンチから立ちあがった。頬を伝った何かの跡が気にならないこともなかったが、ふりはらうように綾は半分しか食べなかった焼きトウモロコシを屑かごにすてた。
 綾の去った公園は、初秋の陽が傾きはじめていた。
 


 「異界皇子」1部 連載終了です。
 途中、間の開いたこともありましたが、無事、ここまでたどり着けました。読者のみなさんのおかげです。
 年越し前に2部を書きたいと思ってます。閻浮の、綾の成長を描いてみたい、と思います。
 小説アップはとりあえず、しばらく休止です。ご愛読、感謝します。 では
ラベル:ハト
posted by はむじの書斎 at 13:56| Comment(0) | エンタメ・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。